一般財団法人サンスター財団

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自閉症児

自閉症の子供のためのやさしい歯みがき指導

当財団では、平成15年から行われている「8020推進財団の歯科保健活動助成交付」を受け、養護教論及び障害児教育担当教員、自閉症支援の専門療育スタッフ、歯科医師及び歯科衛生士が、「学校、療育、歯科」という3分野の知識、技術と経験を活かし、障害のある子どもたちの歯科保健の向上をはかることを目的とし、自閉症へのお子様への歯みがきの指導をモデル事業として実施してまいりました。

はじめに

かたい歯を削るドリルやタービンの音、まぶしいライトや白衣、注射器や薬品の臭い、ときには泣きさけぶ声やうめき声など、歯科治療室は子どもに不安や恐怖感をもたらす刺激であふれています。 むし歯になってしまったとき、社会経験の少ない子どもにとって歯を治療することは、たいへん勇気のいることです。できれば子どもには、歯を治療しなくてもすむように育ててあげたいものです。

とくに自閉症児では、日常的になじみのない環境におかれたとき、たいへん不安になります。歯の治療は、仰向けになって、口をあけ、なにをされているか見えない状態で、長い時間、つよい音や振動、光を浴びながら、ときには痛みや苦痛をともなう処置をうけることです。つよい刺激や人に触られることが苦手な自閉症児にとって、歯の治療はたいへんな試練といえるでしょう。

このような歯の治療をしなくてもすむように
  1. 日常的な歯みがき習慣をつけること
  2. 甘い食べ物や飲み物はじょうずに摂ること
  3. 定期的なチェックと予防のための指導や処置をうけることが大切です。

歯科保健は、生活習慣として定着してこそ意味のあることですから、子ども自身にも、周りの者にも、楽しく続けられるものでなくてはなりません。子どものときの経験や印象は、ずっと心に残ります。また、子どものときにつけた習慣は、ながく続きます。 自閉症の特性を理解して、自閉症児にとってわかりやすく、行動しやすくなるよう、工夫しながら歯科保健を実践していただければと思います。その工夫は、家庭だけでなく、学校や施設、さらには歯科医院でも大切なことです。

さまざまな立場や職種で話し合い、協力しながら、自閉症の子どもとともに楽しい歯科保健をはじめてみませんか。そのときの参考にしていただければと、新澤伸子先生と一緒に(財)サンスター歯科保健振興財団の企画に賛同し、この冊子を作成しました。 ご活用いただければ幸いです。

平成19年11月
梅花女子大学 口腔保健学科
教授 森崎 市治郎

1.自閉症って?

自閉症の3つの主な特徴

自閉症とは「自ら心を閉ざしている状態」ではありません。
親の育て方やいじめが原因で自閉症になることもありません。先天的な脳の機能障害が原因だといわれています。だからこそ、正しい理解に基づく適切な教育・支援が必要です。

自閉症は、の図に示す3つの行動特徴で診断されます。
単に「視線が合わない」「あやしても笑わない」などの一部の行動特徴だけでは診断されません。

自閉症に含まれるグループ

自閉症の中には、ことばの発達や知的発達に遅れの認められない「アスペルガー症候群」や、 知的発達に遅れのない「高機能自閉症」などのグループが含まれます。 自閉症としての共通の特徴や生活上の困難さを抱えており、支援が必要です。

2.自閉症を理解するための鍵

氷山モデル

自閉症の子どもの視点からみた周りの世界は、どのように見え、聞こえ、感じられているのでしょうか?
周りの人の関わりやことばかけを、どんな風に理解しているのでしょうか?
子どもの視点から理解することが、適切な支援のスタートになります。

氷山モデル

社会性の発達の違い

たとえば・・・ ▼
  • 視線が合いにくい
  • 人のまねをしない
  • ほめたり叱ることで「しつけ」をすることがむずかしい
  • ひとりでいることを好んでいるように見える
  • 思ったことをそのまま言ってしまう
  • 一見自分勝手で、わがままに見える

とじる▲

それはなぜ? ▼
  • 相手の意図・期待・感情を読みとったり共感することがむずかしい
  • 暗黙の了解、順番などのルール、常識などを理解することがむずかしい

とじる▲

だから ▼
  • こちらの期待は、はじめにはっきり子どもにわかるようにつたえておきましょう
  • ルールは見てわかるようにはっきり示すようにしましょう
  • 少しでもうまくできたときに、子どもの喜ぶ方法でほめるようにしましょう
  • 頭ごなしに叱る前に、子どもの頭の中にどういう考えがあるかを想像してみましょう(子どもは以前経験したことの記憶をもとに行動している場合が多い)
  • 失敗したことをくどくどと叱るよりも、どうしたらよいかを具体的に示しましょう
  • 体罰は禁物です。効果は持続しません

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コミュニケーションの発達の違い

たとえば・・・ ▼
  • 呼んでも振り向かない
  • 言葉かけに応じない
  • 聞いたことばをくりかえす
  • 意味の取り違えが多い
  • 言葉を文字通りとらえる
  • 冗談やたとえ話が通じない
  • しゃべるほどには理解していない
  • 人の手を道具のように使って要求を表す
  • 指さしなどの身振りや表情を使うことが少ない
  • 言葉よりも行動や態度で表わす
  • 独り言が多い
  • 人に伝わりにくい言い回しをする
  • 一方的に話し、会話になりにくい

とじる▲

それはなぜ? ▼
  • ことばを耳で聞いて理解することがむずかしい
  • 一つの言葉に一つの意味を当てはめている
    (一つの言葉がいろいろな意味で使われると混乱する)
  • 考えていること、感じていることを言葉に表わすことがむずかしい
  • 頭の中の考えと、言葉に出して話すこととの区別がつきにくい
  • 相手の反応を確認しながら話をすることがむずかしい

とじる▲

だから ▼
  • 言葉かけは、短く、簡潔にしましょう
  • お互いにより確実に伝え合い、理解し合えるように、具体的な物、絵や写真、文字や文章表示など子どもにわかる視覚的なコミュニケーション手段を利用しましょう
  • 視覚的な手段を使うことは、言葉の発達の妨げにはなりません。コミュニケーションへの意欲を育てることになります
  • 子どもが今持っている手段で、意思疎通できるように支援することが、わからない・伝わらないストレスを軽減し、問題行動を予防することにつながります

とじる▲

想像することの困難性

たとえば・・・ ▼
  • 物を並べたり、同じことを繰り返して遊ぶ
  • 「見立てあそび」や「ごっこ遊び」をしない
  • 特定のマークやアルファベット、数字などに極端に興味を示す
  • 初めての場所や人に慣れるのに時間がかかる
  • 道順、いつもの手順、生活パターン、時間、物の配置などのささいな変化にも抵抗する

とじる▲

それはなぜ? ▼
  • 経験していないことや見えないものを想像することが困難
  • 過去の経験をまるで写真やビデオのように映像的に鮮明に記憶している
  • だから、初めての場面や日課や手順の変更は、不安や混乱につながる

とじる▲

だから ▼
  • 初めての場面や活動では、無理強いをせず、子どもが場所や人になれるための時間をとりましょう
  • さらに、初めての場面に際しては、子どもが見通しを持てるように、あらかじめ絵や写真などで、「いつ」「どこで」「なにがおこるのか」「いつ終わるのか」などを示すことが役立つでしょう
  • 日ごろから、日課や予定を絵・写真・文字など視覚的な方法で示していれば、急な予定の変更の場合も、視覚的に示す方が、子どもにより混乱なく伝えることができます

とじる▲

感覚刺激の感じ方や注意の向け方の違い

たとえば・・・ ▼
  • 感覚の感じ方が極端に過敏だったり、鈍感だったりする
    聴覚・・・・・・ スターターピストル、大声、鳴き声、室外の物音などに過敏
    視覚・・・・・・ 関係ないものが目に入ると気が散りやすい。蛍光灯がまぶしい
    嗅覚・味覚・・・ 関係ないものが目に入ると気が散りやすい。蛍光灯がまぶしい
    触覚・痛覚・・・ 人に軽くさわられても痛い、特定の肌触りの服しか着られない、ケガをしても痛みを感じにくい
    ※感覚の過敏性・鈍感さは個人差が多い
  • 関心のないことには、注意集中しない反面、自分の興味のあることに没頭すると周囲の働きかけに反応しない

とじる▲

それはなぜ? ▼
  • 脳の情報伝達の仕組みの違いから、感覚刺激の感じ方が過敏だったり、鈍感だったりする
  • たくさんの刺激の中から、重要な物事に注意を向けることが困難
  • いったん一つのことに注意を集中すると、注意を切り替えることがむずかしい

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だから ▼
  • ひとりになれる場所を用意したり、衝立、カーテン等を利用し、必要以上の視覚・聴覚刺激を調整あるいは遮断できるようにしましょう
  • ヘッドフォン・イヤーマフを身につけるなど、過敏な感覚刺激の緩和方法を教えてあげましょう
  • 新しいことを身につける場面では、不必要な刺激の少ない環境の中で、練習できるようにしましょう

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3.やさしい歯みがき

子どもの特性を考慮しながら歯みがきを考えてみましょう

親の悩み子どもの気持ち解決策
朝食後に歯みがきをさせようとすると嫌がる。 いつも寝る前にしかしないのになぜ? 毎日同じ時間に行うか予め変更するという情報を伝える。
家では寝る前に歯みがきするけど、幼稚園のお弁当の後ではしない。 場所が変わると要求されていることがわからない。 家と同じハブラシ・コップを使う。今から歯みがきをすることを伝える。
「しっかり」「きれいに」「ちゃんと」歯みがきするように注意しても、効果がない。 抽象的な表現がわからない。 絵カードなどを使って、どこを、どれくらい磨くのか明示する。
大人が子どもの歯をハブラシでゴシゴシと磨く。 感覚の過敏な子は紙やすりで削られているように痛く感じる。 ガーゼなどで歯を拭く。自分でハブラシに慣れさせる。軟毛のハブラシを使う。
「歯みがきしないと怖いバイキンが来るよ。」と言うと、必要以上に怖がる。 聞いた言葉をそのままうけとめる。 毎日歯みがきするとむし歯になりません。(おどさず、肯定的に)
いままでの関わりをチェックしてみましょう

※以下のようなことは、自閉症の子どもにとって混乱のもとになります。



さあ、歯みがきを始めましょう!

自閉症の子どもに次のことが、具体的に見てわかるように伝えましょう。

1.どこで?歯みがきをする場所を考えましょう。 ▼

おもちゃやテレビなどの刺激のない一定の場所で歯みがきをする習慣をつくりましょう。

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2.いつ?歯みがきの時間を考えましょう。 ▼

歯みがきの時間を、日によって変えたり磨いたり磨かなかったりすると習慣がつかないだけでなく、混乱してしまうかもしれません。
子どもがわかりやすいように一日のスケジュールの中で、同じ時間帯でするようにしましょう。

いろいろな歯みがきの時間の伝え方
  1. いつも同じ時間帯にする。

    ・ご飯のあとに行う
    ・お風呂のあと
  2. ハブラシを見せて伝える。
  3. 絵や写真、カードで伝える。

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3.どうするの?歯みがきの方法の伝え方。 ▼

どこを、どれくらい磨くのかが、見てわかるように写真や絵カードで示すことで、見通しがつきやすくなります。
又、いつも大人が声掛けや援助をしなくても一人で磨くことができるようになるためにも有効です。

1.カードの例
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1.カードの示し方
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  • めくり終われば終了
  • 作業が終わるたびにクリップを外していく方法もあります。
  • めくり終われば終了
3.指導のしかた

どれだけの部位を磨けば終わりなのかを伝えます。始めは少ない枚数から徐々に増やします。
指示した歯の場所と自分の歯の場所をマッチングさせて、同じ場所を磨かせます。必ず毎回同じ順番で指示する。
援助として、手を添える、指示した場所を指差しする、声かけ、見守り、自立へと進めていきます。声かけをするときは、「短く」「肯定文」で「簡潔」に行うことが大切です。
例)ハブラシをかむとき→口を開けます。歯磨剤を舐めるとき→磨きます。前歯を磨くとき→(指差しながら)ここを磨きます。 など

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4.どれくらい?どれくらいの歯みがきをするのか考えましょう。 ▼

子どもが負担にならないレベルから始めることが大切です。磨く部位や、歯みがき回数も徐々に回数を増やしていくとよいでしょう。

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5.そのあとは?歯みがきの後に行うことを伝えましょう。 ▼

歯みがきがおわったあとに仕上げ磨きが必要な場合は、仕上げ磨きのカードも絵カードの中に入れるようにしましょう。
遊びながら歯みがきをする傾向がある場合は、歯みがきのあとに遊べることを伝えておきましょう。

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※これらの方法は一例ですので、すべての子どもに当てはまるものではありません。

むし歯予防について

むし歯ができてしまうと、お口の中はむし歯菌(ミュータンス菌)がいっぱいです。
むし歯は感染症です。どんどんと他の歯もむし歯になります。 むし歯ができたら、早く治療しましょう。
むし歯の痛みや治療を経験しなくて済むよう、日常の生活習慣を見直していただければと思います。

むし歯菌の感染予防

生まれたばかりの赤ちゃんは無菌状態ですが、そのうち周囲からむし歯の菌が口の中に入っていきます。
そこで大切なのが家族(特に母親)のお口の健康管理です。
ご家族でむし歯があれば治療し、お口の清掃を心がけ、感染しにくい環境を整えましょう。

飲食回数の管理

砂糖を食べるとむし歯菌の作用でお口の中は酸性に傾き、歯からカルシウムが溶け出します。特に間食の回数が多いほど、歯からカルシウムが溶け出す時間が長くなり、むし歯になるリスクが高くなります。間食の回数が多くならないようにしましょう。
おやつやジュースは量と時間を決めたほうがよいでしょう。

ガムの利用

お砂糖はむし歯の原因になりますが、キシリトールやパラチノースなどはむし歯になりにくい性質があります。

  1. 唾液の分泌を促進します
  2. 唾液の中のカルシウムが歯に沈着し歯を硬くする作用があります
  3. 砂糖のように歯を溶かす酸をつくりません
うまく歯みがきができないとき、応用できるこれらの菓子の3条件
  1. ガムまたはタブレット
  2. シュガーレスと書いてあること
  3. 成分表示で糖類が0gであること
以上の項目を確認してください。
注意事項

有効な摂取方法として、食後や間食後(歯みがきの前に噛んでもいいです)に、毎日3~5回用います。
ガムは味がなくなっても5~10分噛むことが大切です。タブレットは噛まずになめるようにします。
ただし、一度に多量に食べるとおなかがゆるくなることがあるので、ご注意ください。

フッ素の利用

フッ素は、歯質を強化して、むし歯になりにくくします。歯科医院で年に1~2回塗布する方法もありますが、自宅でフッ素入り歯磨剤を使用するのも効果的です。

定期的な歯科検診の受診

むし歯や歯周病になる前から、歯科検診を受けることは大切です。定期的に必要な検診や指導を受けること、歯科受診に慣れておくと、子どもに多い口や歯のケガで歯科治療のときにも、らくにできるようになります。

歯科に関する相談機関

各地の歯科機関

一般社団法人 日本障害者歯科学会のホームページ(下記URL)にて、障害児・者歯科診療実施口腔(歯科)センターの一覧や、日本障害者歯科学会 指導医・認定医が紹介されています。

URL:http://www.kokuhoken.or.jp/jsdh-hp/html/

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監修 梅花女子大学 口腔保健学科
教授 森崎 市治郎
武庫川女子大学 心理・社学福祉学科
教授 新澤 伸子

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